人間とは、何だ━(・∀・)━!!!! 〜 アンドロイド版「変身」平田オリザ×石黒浩@神奈川芸術劇場

先日、カフカの「変身」の主人公をアンドロイドが演じるという劇を神奈川芸術劇場に観に行ってきた。きっかけはこの記事だ。


日経14.09.30夕 平田オリザのアンドロイド版「変身」 機械通じ人間の本質問う

…正体は「リプリーS1」というアンドロイド(ロボット)。大阪大学の石黒浩研究室が開発した。1世代前の「ジェミノイドF」は人間そっくりの美女だったが、関節が12しかなく、動きは不自由。新型は31となり、動きの組み合わせはほぼ無限に作り出せる…

今回の設計思想について石黒は「顔と手以外は皮膚をとり、運動性能を上げた。動きだけで人間に見えてくる」と説明する…

アンドロイドの役名はグレーゴル・ザムザ、カフカの名作「変身」の主人公だ…

海外で注目度の高いアンドロイド演劇だけに、新作の発注もフランスから…

平田はロボット工学の世界でいう「不気味の谷」という仮説を引き、アンドロイドが進化すれば人間とは何かが逆に問われるとみる…

この実験は、科学と芸術の接点を突く強烈な挑戦だろう…

日経記事より

平田オリザ氏のアンドロイド演劇や石黒浩教授のことは前から知っていた。

琴線探査: 「服を脱いだら、自分は一体何なのか?」わかりません | 平田オリザの神秘的なアンドロイド演劇 - 日経

琴線探査: 「人の内面なんてわからないし、俳優に心はいらない」劇に対する冷徹なまでの真剣さのあらわれか? | 未知の演劇を探す旅路1 劇作家・演出家 平田オリザさん - 日経

琴線探査: 平田オリザ氏のロボット演劇は見ておきたいね。やっぱり。 | ロボット演劇 海超える - 日経

琴線探査: 石黒教授最新作「米朝アンドロイド」相変わらずキモいですねぇ(^^);

けれど、遠かったりして行く機会が無かった。今回は横浜と近いので行ってみた。

公演パンフ

神奈川芸術劇場はとても立派で、天井も高く、良い劇場だなぁと思った。新しいにおいがした。

演者は皆フランス人で、演劇セットに配置されたスクリーンに日本語字幕が投影される。アンドロイドの声はアンドロイドそのものからではなく、PAを通して出ていた。

劇が始まる前からBjork似のリプリーS1(グレゴール)はベッドに寝ていて、何やらもぞもぞと動いていた。劇中、アンドロイドはベッドから立つことは無かったが、上体や表情はよく動いていた。

この演劇のテーマを一言で言えば、「人間とは何か?」ということだと思う。

ある日起きると、いきなりアンドロイドになっていたグレゴール。本人は次第にその状況を受け入れ始めるが、家族はなかなか受け入れられない。それでもアンドロイド(物)になったグレーゴールと会話を重ねていくうちに、その状況を徐々に受け入れていく。家族がアンドロイドになってしまったグレゴールの顔をいとおしそうに撫でたり、寄り添ったりする。最後にグレゴールは家族に「電源を切ってくれないか?」と頼むが、家族は電源を切れなかった。

つまり、家族は血も肉もないアンドロイドとなってしまったグレゴールを人間と認めたわけだ。では、人間であることの定義とは一体何なのかと。

この問いに対するこの劇の答えは、少なくとも、「人間の定義は血肉の有る無しや有機体か無機体かによらない」ということだと思う。それならソフトバンクのロボット、ペッパーくんだって人間になり得るし、Siriだって、映画「Her」の人工知能だって人間になり得ると思う。つまり、「会話できる」ということなのか?

この事はある意味で人間否定とも言えると思う。『自分は人間で、特別の存在だと思っているけれどそれは勘違いで、単に有機的な「機械」であり、心、精神、魂など単なる電気信号の結果にすぎない』ということになるのでは。

はっきり言って、こんな問いに答えを見つけたところでナンセンスではないか?と思う反面、ではなぜそんな演劇を観に行ったのか?という疑問がわき上がってくる。自分自身を知ろうとする本質的な欲求なのだろうか。少なくとも、「人間だからといって特別な存在ではない。おごるな。」という教訓を得られたとは思う。

劇の後に平田オリザ氏と石黒浩教授トークセッションがあって質問することができた。そこで自分は「どのようにアンドロイドを動かしているのか?」と質問した。

アンドロイドは、オリザ氏が数日徹夜でプログラミングしたモーションを劇中でリアルタイムにトリガーすることで演じているそうだ。これはつまり、「演出=プログラミング」ということで、初音ミクなどの3DCGのアニメーションに似ている。

ふと思ったのは、オリザ氏にモーションキャプチャーをつけて、そのモーションをそのままアンドロイドに移植したら楽になるし、おもしろいんじゃないかなと(^^);

CGという仮想の世界でだけでなく、演劇という現実の世界でも同様のことが起きていることが興味深かった。


11月にも違うアンドロイド演劇+シンポジウムがあるらしい。


スカパーなんかでもオンエアされるらしい。


DVDもあるって。



カフカの「変身」をもう一度読みたくなったよ。いまどきは青空文庫とかあるから、いつでも読めて助かるよね。

青空文庫 カフカ「変身」

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