映画「立候補」 〜 泡沫候補たちは本当に「負けた」のか? マック赤坂曰く「人生はおもしろい」

先日、下北沢でこんな映画を見てきた。

映画「立候補」


下北沢のトリウッドという映画館だったのだけど、本当に小さい映画館だった。たぶん今までで一番小さいクラス。朝早かったということもあってお客さんはまばらだった。しかし、劇場の小ささとお客さんの少なさが相まって、観客の一体感のようなものがあった。みんなで大爆笑したり、失笑したりしてね。貴重な体験だった。


入り口のこのポスターを見て、自分は正しい作法で映画館入りしたことがわかった。朝マックからの〜朝マック赤坂だったからだ。

「とりあえず、おまえはこの映画に星いくつ付けるのか?」と問われれば、即座に「星5つだ」と答える。


強烈な「キャラクター」たち

(敬称略)

羽柴秀吉


府知事選に立候補しようとしたけれど、肺がんを患い立候補を断念。マック赤坂をして「羽柴秀吉は立候補しないのか?」と言わしめるほど数々の選挙に立候補し、そして負け続けてきた。

羽柴誠三秀吉 - Wikipedia

何がしたいのかはよくわからない。地方選挙から国政選挙まで手当たり次第だからだ。ハッキリ言って、とにかく何でもいいから「議員になりた〜い!」という感じに見える。

知らなかったのだけど、彼はものすごい金持ちらしい。金の次は権力が欲しくなったのだろうか。恐らく、そういったところを有権者に見透かされているから負け続けるのだろうなと。

キメの言葉は「天下取りは一筋縄ではいかない」だったw


高橋正明


街頭では政策を訴えず、挨拶ばかりしていた。「こんにちは。ご苦労さまです。よろしくお願いします。」って。

「よろしくお願いしますって何がよ?」とつっこみたくなる。しかし、街頭の人たちはつっこむのも面倒だから避けるようになる。だから挨拶だけが繰り返し繰り返し虚しく響く。。。この映画で一番イタくて見ていられないシーンだった。

そんな中、街頭で学校の後輩に出会い、とても喜んでいた。「こういうことがあるからな〜価値ありまっせ」って。

もう一つ引っかかった言葉があった。羽柴秀吉氏を「彼は持ってる」と評したことだ。一体何を持っているというのだろうか。自分には分からない。


中村勝


幼い娘さんと出演されていた。優しそうだけどちょっとくたびれたパパという感じ。

政見放送を見るとそれなりの考え方はあるように思えるけれど、映画を見たかぎりでは、票を沢山集めることによって娘さんを喜ばせたいのかな?と感じた。


岸田修


立候補はしたものの、選挙期間中はほとんど活動をしていなかったようだ。自宅前で取材しようとしてもほとんど拒否。「プライバシーのことはええやないか〜」てな具合。

一体何が目的なのか本当に理解できなかった候補だ。彼のような人が現実にいることを考えると、やはり供託金制度は必要だと思った。


外山恒一


この政見放送は大阪府知事選のものではないが、映画の中で使われていたものだ。彼の政治的メッセージは明確だ。国家の転覆。要するに革命だ。非常に危険な人物だw

主張そのものもそうだが、公共の電波を使って平気でFUCKYOUサインを露出し、「一応言っておく。私が当選したら、ヤツらはビビる!私もビビる。」とカマした上で、ビートたけし風の肩ほぐしでシメる!という危険な立ち居振る舞いw

内容はともかく、この政見放送は傑作だ。一見の価値がある。人の心を動かす演説とはどういうものなのか?他の政治家も彼の演説に学ぶべき所があると思う。

インタビューの中で「あれはキマった」と語っていた。その穏やかな語り口とこの言葉から、この政見放送は用意周到に練られた「芝居」だったんだと理解した。政見放送は編集できないから、それを逆手に取ってノーカットで放送させるという作戦からもその用意周到さが伺える。

彼の場合、当選しなかったとしても同志が集まるというメリットがあるので、活動家としての彼の目的は非常にわかりやすかった。供託金300万円を払うだけの宣伝効果は十分にあっただろう。


マック赤坂


彼については、一見荒唐無稽な政見放送ながら、何か真実が含まれている気がして以前から注目していた。何かを「持ってる」人だと。だからこそ、このように映画になって主役になったのだと思う。経歴はよく知らなかったのだけど、博士だし、伊藤忠だし、しかも相当な金持ちだったようだ。

政策と呼べるかどうかは分からないけれど、彼のメッセージは明確だ。

「スマイルしてまっか?スマイルをメイク!することで、心の持ち方を…マイナスからプラス!ネガティブからポジティブ!へ切り替える」ということだw

しかし、なぜ政治家を志すのか?そこは映画を見た後でもよくわからない。映画中で一人息子の方もそうおっしゃっていた。


安倍さんや橋下さんが悪者に見える仮想体験

自分は彼ら泡沫候補たちから見れば、いわゆる多数派・体制派だと思う。だから、多数派にどんどん流れていく選挙の動きが、泡沫候補の側からどのように見えるのか分からなかった。この映画は、泡沫候補の立場からそれを仮想体験させてくれる。

安倍さんや橋下さんだったら絶対ありえないであろう、警察や公安からの圧力。相手陣営の強面の男たちや相手陣営を支持する有権者たちからの圧力。これは映像の編集方法の問題もあるかもしれないが、自分には安倍さんや橋下さんが悪者に見えたんだ。

驚くべきは、橋下さんなどの多数派は、少数派のことなど全く意に介していないということだ。これが泡沫候補という立場なんだな…と。


金は魂を開放するのではないか?

もちろん、資金的に余裕のない候補がたくさんいることは間違いないが、マック赤坂や羽柴秀吉のような金持ち候補を見ていると、やっぱり金は魂を開放するんじゃないかと改めて思った。

無所属で立候補するということは、望んだ主張を100%できる代わりに、政党からの資金協力や応援演説などの選挙協力を受けられないということだ。本当の意味で独立している人でなければ立候補できないと思う。その独立のひとつの要素は、経済的な独立だろう。

魂の底から「金さえあれば立候補したいんだ!」と考えている人はいると思う。しかし金がなけば、その魂を開放することは難しい。

これは選挙に限らないと思う。「商売上の理由がなければこんなヤツに魂を売ることは無いのに…」とか、「資金があれば独立するけど、無いから社畜を続けるしか無い」とか。

金は大事だ。魂の独立のために。

しかしだからこそ、資金に余裕が無い中で、世の中を少しでも良くしたいと考えて立候補した人たちは、それだけで尊敬に値する。


彼らは本当に「負けた」のか?

どうもそうは思えない。確かに選挙には負けた。しかし、個人の人生としては、勝ったのではないだろうか。

マック赤坂の一人息子がヤジを飛ばされて一人で大勢に立ち向かっていくシーンがあった。彼は父の選挙運動は冷めた目で見ていたにも関わらずだ。その主張は、多数派の中で発言するのは簡単、文句があるならお前が立候補して発言してみろ!という感じだった。

そんな息子を見てマック赤坂はこう言った。

「人生はおもしろい」

人はいつか死ぬ。どうせ死ぬなら、たとえ負けると分かっていても、自分なりの最高を尽くして、戦って死にたいと思う。

泡沫候補たちの立候補する理由、戦う理由はそれぞれ違うし、その最高の尽くし方も違う。しかし、その人なりに最高を尽くして戦ったのだろう。

「負ケルトワカッテ、ナゼ戦カウ。」

これが映画のコピーだが、その理由は、「自分の心に正直に、懸命に生きたいから」ということではないだろうか。

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