日経は日本版GPSに慎重らしい。今の日本に必要なのは夢と希望と誇りと感動だと思うのよ。コストパフォーマンスばかりの話はもういいわ。 | 社説 まず国家戦略あっての日本版GPSだ - 日経

日経11.02.06朝
・・・GPSは防災や安全保障など広く国民に役立つ社会基盤となりうる。長期的な国家戦略に基づき投資効率も考えて判断するならよい。そうでなければ税金の無駄遣いになるだけだ。・・・7基あれば、米国のGPSが使えない事態でもサービスを維持できるが、それには打ち上げ費用だけで2千億円以上かかる。日本版GPSは「準天頂衛星」とも呼ばれ、世界のどこでも使える米GPSとは違う。・・・あれば便利だが、米GPSで用は足りるという程度ならば金をかけてつくる意味はない。・・・宇宙開発推進の立場から利用法を無理にひねり出しては本末転倒だ。・・・投資すると決めたら、意義の薄い、他の宇宙予算や公共事業などを削る覚悟で取り組むべきだ。・・・世界をみれば、米ロのほか欧州と中国、インドが独自のGPSを目指す。欧州は・・・財政難で計画修正を迫られている。世界の動きも視野に判断して欲しい。

日経は日本版GPSに慎重らしい。

記事から読み取れるその主な理由をまとめると

・巨額の金がかかる
・日本のと違ってアメリカのGPSは世界中どこでも使えるし、日本版は要らないのでは?
・用途が曖昧で宇宙開発推進のために無理にひねり出そうとしているのではないか?
・欧州では財政難で計画修正を迫られるなどの世界情勢

というところだろうか。

とは言え、もしあれば便利だろうとは考えておられるようで、結局一番の問題は金だろうか。だとすれば、コストパフォーマンスばかりを考えて夢も希望も持とうとしない、本当につまらない考え方だと思う。

なら「はやぶさ」も無駄だったのか?持ち帰ったのは砂粒だ。金にならないし、直接国民の役には立たないだろう。しかし、多くの日本国民に夢と希望、誇りと感動を与えてくれた。これが無駄なのか?今の日本に必要なのは、まさにこういったことだと思うのだけれど。

巨額と言っても何兆円もかかるわけではない。捻出しようとすれば捻出できるだろうし、省くべき無駄は他にあるはずだろう。


ソフトウェア開発者の立場からすれば、日本版GPSができたら相当なイノベーションが起こると思う。同じ位置情報を使うソフトウェアでも、精度が10倍ならその設計コンセプトや発想はまったく違ってくる。

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最近、Googleをはじめとするアメリカのネットサービス大手は位置情報関連のサービス開発にますます力を入れている。今後この分野にどれくらい可能性があるかを分かっているからだ。

もしアメリカのGPSと補完しながらも、アジア太平洋地域ではより高精度な位置情報を使えるとなれば、彼らもきっと欲しがるはずだ。

日経はひょっとすると、自前のGPSをもつことでアメリカとの関係が悪くなるかもしれないと考えておられる可能性もあるけれど、そういうわけでアメリカとの同盟関係にヒビが入るどころか、より同盟を強化する方向に持っていくことも十分に可能だと思う。

「世界の動きも視野に判断して欲しい」とおっしゃるけれど、予算削減・規模縮小の話だけでなく、こういったことも世界の動きのひとつだということを指摘しておきたい。


また、安全保障分野で考えても、なぜアメリカのGPSがあるのにロシア、欧州、中国、インドの各国は独自のGPSを持とうとするのかをよくよく考えるべきだ。

もし万が一、運悪くアメリカとの関係が悪くなってGPSが使えなくなったらどうする?昨日の敵は今日の味方。今日の味方は明日の敵かもしれない。実際、昔アメリカは敵だったではないか。あり得ないと言うだろう。しかし、そのあり得ないことに備えるのが危機管理であり、国防だろう。

そして、こういった独立路線のひとつひとつが他国に足元を見られないための国家戦略であり、ひいては外交力の強化にもつながるのだと思う。もう、これだけでも十分に国家戦略がある話だと思う。


結論として、総合的に考えて日本の国益にとって大いにプラスだと思う。コスパのことを考えたとしても、これで二千億円程度なら十分コスパは高いと思う。ここで言うコスパとは、直接金を生み出すパフォーマンスのことだけではなく、金では買いにくい力を得るパフォーマンスも含む。

政府には、プロジェクトのコストの見直しをしつつ、今こそ日本全体の無駄を省いていただいて、何とか予算を捻出して強力に推進して頂きたいと思う。

ひとりのソフトウェア開発者としても、ひとりの国民としても、大いに期待しております!

コメント

  1. こんにちは。iPhoneやカーナビ等の現状のGPS測位精度10メートル程度(以上)と言うのは、ランダム性誤差によるものが大きいように見えるので、そうすると準天頂衛星システムを利用しても、目に見えるほどの改善はないでしょう。

    wikipedia(「衛星測位システム」「準天頂衛星システム」)にも測位誤差に関する記述があります。

    > 陸域では誤差が1cm以下の高精度補正情報を基準局網から生成することが日本国内では既に行われている。
    > なおランダム誤差については補正情報(ディファレンシャル測位)によっては除去できない。
    > マルチパスによる誤差はランダム誤差の性質を持つ。受信機及びアンテナによっては、誤差の大きさは数十m以上に達することも頻繁である。

    返信削除
  2. なるほど。

    ということは、期待したほど精度は上がらないので、ソフトウェア開発でイノベーションが起こる可能性は低いということでしょうか。もしそうだとすると、開発者としては残念ですね。

    ただそれでも、危機管理、国防、外交などの観点からは、日本が自由にできるGPSはあった方がいいと思います。

    しかし、精度が大して上がらないのならば、コストの面をカットしたり、優先度を下げたりする必要はあるかもしれませんが。

    返信削除

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